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頸肩腕障害(けいけんわんしょうがい:頸肩腕症候群、けいわん) [産業医学科]

頸肩腕障害(けいけんわんしょうがい:頸肩腕症候群、けいわん) [産業医学科]

手をよく使う作業を続けていると、手やうで、肩、くびなどがちょっとだるかったり疲れを感じたりしてきます。これは、筋肉の疲労による症状と考えられており、だれでも一度は経験することでしょう。それでも作業をやめずに続けていると、だんだんと「こり」や痛みがでてきます。重いものを運ぶなど物理的に大きな力を発揮する作業の場合には、短い時間でこれらの筋疲労症状がでてきますが、小さな力ですむ作業の場合にはすぐに症状はでてきません。小さな力ですむ作業でも、同じ動きをくり返したり、同じ姿勢を続けたりしていると、だんだんと疲労がたまってきます。その疲労のつみ重ねによって、筋肉がこったり、だるくなったりしてきます。比較的短い時間ででた症状とはちがい、慢性的なこりやだるさは、なかなか取れず、針灸や整体、マッサージなどで一時的によくなっても、また元に戻ってしまいます。そして、さらに疲労がたまっていくと、だんだんと痛みを感じるようになります。それまでは気持ちよかったマッサージで、痛みを感じるようになってきます。そして、しびれや冷え、力の入りにくさ、うごきにくさなどの症状もでてきます。また、不眠や食欲低下などの自律神経症状やうつ症状などもでてくることもあります。

頸肩腕障害と闘う

このテキストは、初めて「ケイワン」と診断された方が、より効果的に病気と闘い、一日も早く治ゆされることを手助けしたいとの念願から作られたものです。
どんな病気でもそうですが、病気とたたかい、病気を治すのは、患者さん自身なのです。医師をはじめとする医療担当者は、そのたたかいを援護し、励まし、早くなおるようにいっしょになって、考えたり、工夫したりにすぎず、患者さん自身が、これとどうとりくみ、どうたたかうかが決め手となります。
それにはまず、みなさんに、この病気について、正しい知識をもっていただく事が、大切です。そのための参考にこのテキストを活用していただくことを念願しています。

頸肩腕障害とはどんな病気か

この病気が社会的に注目されるようになったのは、昭和三十年代の中ごろからでした。金融、損害保険などの職場に、コンピューターが導入され、そこで働くキーパンチャーと呼ばれる人達の間で、肩や腕のこりや痛み、手指の痛みやしびれを訴える人達が沢山出てきました。こんな病気を当時は、腱鞘炎(ケンショウエン)とか頸肩腕症候群とか呼んできましたが、そのうちに、この病気は、タイピストの人達や、ボールペン複写、お札の勘定をする人、スーパーのレジをする人達にもみられるようになりました。さらには、保育所の保母さん、施設で働く人達、ベルトコンベアー作業の人々、学校給食の調理員の人達にも、同じような症状がみられるようになりました。さまざまな職場で、さまざまな仕事をしている人達の間に広まっていったのです。
最近では、主に仕事が原因でおこっているこの病気のことを、頸肩腕障害と呼ぼうということになり、その予防対策や治療について、いろいろと研究が進められています。

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頸肩腕障害の症状

産業衛生学会が、頸肩腕障害という名前でこの病気を呼ぼうと提案したのは、それなりの理由があってのことです。
第一には、この病気は仕事による無理が主な原因となっているからで、第二には、従来、ケンショウエンとか、頸肩腕症候群といわれてきた病気と比べて、症状が複雑であり、一応これらと区別して考えたほうが、治療や予防を考える上で、うまくゆくということでした。
ケイワンの症状のあらわれ方や進み方は、その仕事により、またその人により少しずつ違いますが、まず手の指、手関節、上肢、肩こりやだるさからはじまります。はじめはだるいとか、疲れやすいものだったものがだんだん進んで痛みや、うずきとなって苦痛が強くなっていきます。手や手首が主にいたい人、肩、背中が痛い人などいろいろです。
痛みも動かす時だけ、使う時だけの痛みから、じっとしていてもたえず痛む、それからその部分が熱をもったりはれたりなど程度はさまざまです。
手指の冷えやしびれ、さらにはふるえをきたし、物が書きにくいなどの訴えも現れ、ひどい時には、手指が白くなるレイノー現象がみられることもあります。
これらの訴えは、必ずしもよく使う方に現れるとは限らず、右手をよく使うのに、左手の方に症状が強く出ることも、よくみられます。
また頸、肩、腕、手だけでなく、こりや痛みが背中や腰にまで及んだり、下肢がだるかったり、足先がしびれるという訴えも、よく聞かれます。
病気がひどくなったり、長びいたりすると、頭が重かったり痛かったり、耳鳴りがしたりすることもあり、さらにいらいら、物忘れ、めまいなどのいわゆる自律神経症状を伴う場合も、時にみられます。

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頸肩腕障害はどうしておこるのか、その成りたち

ケイワンの原因の大部分は、仕事による過労です。もちろん個人の体質や年令などの影響も全く否定するわけにはいきませんが、少なくとも主な原因は仕事によると考えていいでしょう。

1)使いすぎの過労
たとえばキーパンチ作業だとか、電話送りの原稿を6枚も7枚もの複写で記録するとか、細かい作業をするための手指の筋肉に、ある程度以上の力をこめて、毎日毎日使いつづけると、これらの筋肉は疲労して来ます。それでもなお休めないで使うと、だんだん痛み、こり、ついには、はれなどをおこし、手指が曲がらなくなったり、のびなくなったり、けいれんをしたりなどの症状が出てきます。
手指にあるような小さい筋肉ほど疲れやすく、疲れのなおりが遅いものです。
2)じっとしている疲れ
私たちの筋肉は、適当な運動を行なうことで、血液の流れをよくしその力を保つことができるようになっています。ところが反対に、全く使わないでじっとしていると、かえって血の流れが少なくなり、筋肉は萎縮してゆきます。
また、筋肉は、静的緊張といって、ある状態をじっと続けていると、極端に血流がへって、必要な酸素や栄養素が充分におぎなえなくなり、疲労物質がたまってきます。
この状態も、ケイワンのおこる重大な理由だと考えられます。同じ姿勢をじっと保ち、目と腕というように、同じ筋肉ばかり使っているベルトコンベアーの人達などは、この要素が大きいでしょう。
3)不自然な姿勢、のびすぎ、ちぢみすぎ
ある一定時間、きめられた姿勢を続けるためには、整理にかなった楽で自然な形というものがあります。しかし機械に合わせた姿勢や、せまいところで無理にしゃがみこんだり、高いところへ無理にのびあがったりで、どうしても仕事の上から、快くない無理な姿勢や、動作をしなければならず、しかもこれをくりかえしていると、症状が出やすくなるようです。無理や不自然でない姿勢でも、あんまり長い時間じっとしているのも、頸、肩、背、腰に大きな負担をかけます。
4)全体としての運動不足
体のごく一部分の使いすぎが、ケイワンの“横綱”で、じっとしている疲れが“東の大関”とすれば、“西の大関”といってもいいものに、身体の全体的な運動不足をあげなければなりません。たしかに皆さんは、合理化、労働強化の中で、よく働いておられます。しかし良く考えてみて下さい。仕事での体の、とくに筋肉の使い方というのは、きまりきった部分を、きまりきった方法で使っているとは思いませんか。
日常の仕事や生活の中で、こころよく汗をかくというようなことが、めっきりと減ってきているのが私たちの毎日です。とくに体の大きな筋肉(例えば下半身の筋肉)を大きく使うことが少なくなっています。そのために全身の血液の流れもとどこおりがちになり、いろいろと故障がおこります。これもケイワンをおこしやすい原因になっていると思われます。ちょっときくとおかしいようですがケイワンの成り立ちには、小さい筋肉の使いすぎと、大きな筋肉の使わなさすぎが、大きな比重を占めているのです。
5)精神や神経のつかれ
ケイワンの発病を考える上で、もう一つ忘れてはいけないことがあります。人間は毎日毎日の仕事や生活が楽しくて生き甲斐がある場合、少々耐えられるものです。
しかし自分のやっている事の意味がわからず、仕方なしに仕事をいやいややらされている場合だとか、職場に民主的なふんいきがなくて、自由に物がいえなかったり、上肢の顔色をたえずうかがっていなければならなかったり、仕事そのものが工夫も創意もいらない単純なものであったり、こんな時には何でもない仕事がひどく苦痛に感じられるでしょう。また場合によっては、職場の同僚とのおりあいがわるく、気まずい毎日であったり、家庭に心配事があって、仕事に集中できなかったり、ということもあるでしょう。このような精神的な疲れ、気づかれが、健康に影響を及ぼしますが、ケイワンの場合とくにこのことが無視できない要因となっていることが多いようです。
また小さい文字や、意味のない記号を正確に読み取ったり、聞きとったり、作業場が暑かったり、寒かったり、空気が汚れていたり、騒音でうるさかったり、こんなことでおこる神経の疲労も病気をおこしやすくします。ひどく精密さが求められる作業や、こわれやすいもの、危険物のとりあつかい、いつもお客さんを相手に気を配らなければならない仕事も同様です。

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頸肩腕障害はどうして治すか

どんな病気でも、そのおこる原因をたしかめ、原因をなくしてゆくのが、病気の治療の大原則です。原因をとりのぞきさえすれば、たいていの病気はその体に備わっている自然治ゆ力で治ってゆくものです。
ケイワンの治療も例外ではありません。

1)まず原因をなくす事
仕事の負担が大きくておこった病気ですから、まずこれを軽くすることが第一であることは、言うまでもありません。でも仕事が原因であるからといって、仕事をなくしてしまうわけにはゆきませんから、そして負担を軽くすることも、必ずしもできるとは限りませんから、とにかく先ず仕事を休むことが、治療の第一歩だといえます。仕事から離れて、のんびりと体を休めるわけです。これだけで多くの人はかなり楽になると思われます。いろんな事情があって、どうしても仕事が休めない場合は、仕方がありませんから、せめて半日勤務で、午後は休むとか、それもだめなら、週三回を通院日として、三日だけでも半日仕事からはなれることができないか工夫をしてみましょう。こうして療養生活に入ったら、先に書いたようなことをもとに、自分の仕事を点検してみて、何が主な原因で病気になったのかを、よく考え、職場の同僚や、労働組合の役員の人達ともよく話し合って、どうしたら二度と病気にならずにすむか、自分と同じような病人を、仲間の中から出さないためには、どうしたら良いか、充分理解を深めなければなりません。 このことは、病気回復後の職場復帰の際に大切なことです。
2)とにかく心と体を休めよう
ケイワンだといわれたらとにかく充分な休養をとること、これが第二のやるべきことです。全身の疲れと心の疲れをまずとることから治療が始まります。充分な睡眠と規則正しい生活、はじめは臥床安静を必要とする人も中にはありますが、多くの人は、少なくとも八時間の睡眠、バランスのとれた食事をきちんととることを基本にして、日課表をつくって規則的に正しい生活を送ることが、大事なことになります。どのような病気の人にも散歩程度のことは許されますので、疲れをとることが大切だからといって、運動不足にならないように心がけて下さい。あんまり痛くて、心身の安静が妨げられたり、安眠できないような時には痛みをガマンすることが、ますます病気を悪くすることにつながりますので病状にあった薬なり、注射なりで、医師に痛みをとめてもらうべきです。
3)薬や注射などの治療を要する場合
ケイワンでは、原則的には、薬や注射を用いなくても、充分回復することができます。しかし痛みやハレがあんまり強いような(急性に病気が出た場合など)時には、一時的にでも痛みを止め、ハレをとる薬を使うことで、病気の進行を止め、苦痛のためおこる体の反応をおさえ、早く症状を落ちつかせる意味で時々このような方法をとることもあります。またケイワンによってひきおこされた合併症、例えばレイノー現象だとか不眠などの神経症状を伴う場合も、薬を使わなければならなくなることもあります。
4)筋肉のつかれをとる
しかし何といってもケイワンの治療の主流は、理学療法、物理療法になります。  筋肉の疲れがケイワンの主な病態だとすると、それをとるためにいろんな工夫がされています。先ずホットパック、これはその部分をあたため、血液の流れをよくする効果があり、コリや痛み、しびれを軽くします。超短波(マイクロ)赤外線などの電気治療、入浴、気泡浴などもほとんど同じ目的で用いられます。ついでマッサージ、これも筋肉をもんだり、さすったりすることで、筋肉の緊張をほぐし、適当な刺激をあたえて、血流をよくします。頸椎けん引は頸を適当にひっぱることで、頸、肩への痛みを軽くし、筋肉の緊張をやわらげるものです。この三者が理学療法の主流のようですが、その他にパラフィン浴も最近では用いられており、これも温熱療法の一つです。
このような治療は病院で主にやりますが家庭では、同じような意味で入浴が比較的手軽に行なえる方法です。こつは熱すぎないどちらかといえば、ややぬるい目のお湯で、その浮力を利用して、軽い屈伸の運動をすれば、なおよいでしょう。
5)運動でつかれをとる
運動で疲れをとるといえば、ちょっと変に聞こえるかもしれませんが、この病気のなりたちのところをもう一度思い出してください。筋肉は適当に運動することにより、血液の流れが良くなること、大きい筋肉の屈伸で、全身の循環状態も改善されることが書いてあったでしょう。血液の流れを良くして疲れをとろうというわけです。まずブラブラ散歩、これはケイワンのどのような症状の人でもほとんど皆さんがやっていただける運動です。ついでに歩く速度を速めてみましょう。少しばかり息がはやくなり、心臓の鼓動がドキドキと自覚される程度にして一回十分の単位で、一日二回位からはじめだんだん時間をのばしてみます。とにかく毎日やること、これが一番かんじんです。一回にどのくらいやったらよいか目安は、運動のあと気分のよい疲れを感じ、その疲れがいつまでも、とくに翌日まで持続しない程度を目標にしてみたらと思います。ケイワンの特別な体操としていくつもいろんなところで考察されていますが、腹筋運動がいちばんポピュラーなようです。たとえば、就寝の前など、あおむけにねそべって、両下肢をそろえて、上にあげる運動をくりかえしたり、同じようにねそべって、今度は、足首を家族の人におさえてもらって上体をおこす運動をくりかえしたりするのですが、このような運動がケイワンの治療としても、また予防体操としても有効だといわれています。
6)スポーツやリクレーションも
前記の体操の他にも、疲労回復の手段として、スポーツ、山登り、ハイキングリクレーションがあります。体操や運動療法は主に個人でやるもので、よほど好きな人か、よほど意志のかたい人でないと、どうしても長続きしにくいようです。それに比べてスポーツは、それ自身に競技、記録という面白さが加わり、リクレーション効果もみられる利点と、集団でやることが多いので、お互いの連帯や仲間意識を育てて、場合によっては患者さん同志の励ましあいになるので、大変良いことです。その反面、毎日続けることがむずかしいとか、場所や道具がいるとの欠点もあり、時には、熱中しすぎて疲れを増したなどの失敗もよくおこります。スポーツの中でケイワンに最もよいとされているのは、ほとんど全身の筋肉をくまなく使う水泳です。水の中では体が軽くて動きやすくなるということもあって、ケイワンの治療によく用いられます。
7)痛みをガマンしてはいけない
運動やスポーツを治療としてとり入れる場合、快い疲れ、長くあとに残らない疲れを目標にといいました。よく気をつけてほしいと思います。同時に運動やスポーツを治療としてやるさいに、もう一つ気をつけてほしいのは、痛みが強くなるような動作はやってはならない、ということです。単なる使い痛みやこりの場合には、少々痛くてもガマンして運動するとなおることが多いのですが、ケイワンという病気の患者さんは、絶対にさけることが必要で、でないとそのために病状を悪くすることがあります。

★症度と病型によって、症状の経過が変わるし、治療法も異なる。病名にこだわってはいけない。

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日常生活の改善

ケイワンは、急性に病気がおこって、比較的短期間になおってゆくこともありますが、再発しやすかったりして、やはり慢性病として気長な療養が必要な病気と考えるべきでしょう。長い経過をたどる病気では病院の治療も大切ですが、自宅での治療や、患者さん自身のする治療、それを助ける日常生活のすごし方が、病気の経過に大きな影響を与えます。

くりかえしになりますが、病気を治すは自分自身だという自覚にもとづく療養生活を正しく設計してゆくことが大切です。

1)規則正しい生活を
さいわいに仕事を休んで療養に専念できる人、仕事を部分的に休む人、仕事を続けながら治療をしている人等どんな患者にも共通していえることはまず適切で充分な休養が基本になるということです。同時にこれとならんで大切なこととして、規則正しい毎日を送ることを強調したいと思います。
とくに仕事を休んでいると、どうしても一日がだらだらときまりがなくなりやすいようです。できれば日課表なども作って、毎日毎日をリズミカルに送ることが必要です。
療養生活の中にも、適度な緊張と、適当な弛緩(リラックス)があることが望ましいのです。消極的な受け身の生活でなく、積極的な療養生活を送ろうということです。時間があるから、休養が必要だからと、たとえば、1日のほとんどの時間、ねそべってテレビを見ているというようなすごし方が良くないのはもちろんです。
2)まわりの人の理解、家族の協力
休養している場合も、仕事をつづけながら養生している場合も、何よりも必要なのは、家族の方達、職場の人達の、病気と療養の仕方への理解です。病気といえば安静という一般的常識とは少し違った療養、適当な運動や、時には体操もスポーツも必要といった治療をしていると大した病人ではないように誤解されやすいと思います。
こういう事についても良く話しをして皆さんの周囲の人達に理解してもらい援助してもらえるよう努力しましょう。
3)食生活
ケイワンの人達にも運動不足によると思われるふとりすぎが目立つようです。ふとりすぎますと、筋肉の血液の流れもよくなくなり、筋肉の力もおとろえ、心臓や肺に余分の負担をかけます。これを予防するためには、運動不足にならないようにすることと同時に、食物の注意も必要です。
ふとりすぎの主な原因は、糖質(糖分)のとりすぎだといってよいでしょう。米飯や、うどん、そば、パンなどは、その大部分が糖質類、カロリーの源となります。甘いもの、ジュースなどの飲料水、コーヒーや、酒類も、あんがいに糖質をたくさん含んでいます。御婦人方の好きなおやつ、おかき、おせんべいなども、糖質なのです。少しふとり気味の方は、気をつけなければなりません。やせ型、肥満型、いずれの人達も筋肉の状態を良くするため、蛋白質(肉、魚、たまご等)をたくさんたべることは、御婦人に多い貧血傾向を予防する上でも、良いことです。このようなことを心がけながら、バランスのとれた、かたよりのない食事をとりましょう。
4)睡眠
充分な快い眠りが疲労の回復にとって大切である事は、いうまでもありません。
一般に大人の睡眠時間は7~ 8時間ぐらいです。若い人ほど、調子の悪い時ほど、ふだんより余分に眠りましょう。眠りにくい時は、睡眠剤や安定剤を適当に使用することも、必要な場合がありますが、快い眠りをさそうには、適度な運動が有効なことも多いようです。
手足が冷えて眠りにくい時の暖房具、あつすぎる熱帯夜の冷房、うまく使ってください。
暑さ、寒さの刺激も、適度であればかえって体を強くしましたが、体の調子をくずしている時は、文明の利器に助けてもらわねばならないこともありましょう。
おふとんのあまり厚くてふかふかなのは、背骨の形をゆがめたり、負担をかけたりしてよくないといわれています。まくらの硬さや高さなど、自分の体にあった気持ちよく眠れるものならば、それほど神経質になることはないのですが、硬くて高すぎるのは、さけた方がよいでしょう。
5)家での仕事
せんたく、炊事、掃除、それに人によっては、育児など、家でしなければならない仕事がいっぱい、自然な無理のない姿勢で、体の一部分に負担をかけすぎないというのが原則です。
たとえば、ハンドバックのようなものでも手にもつより、肩に、片方の肩にかけるより、両方の肩にかける方が良いわけです。
のびすぎ、ちぢみすぎ、長時間の同一姿勢がよくないことはすでにのべました。
きき腕が痛む時、それをかばって反対側をよく使いますが、きき腕でない方は、わずかな無理でも、きき腕よりも痛みやすいことも知ってほしいものです。
6)きるもの、はくもの
なるべくゆったりとした、体の自由な動きをさまたげないようなものを着たり、はいたりすること。流行もありますが、体のために、多少はしんぼうしましょう。ジーパンのように、ピッチリと体をしめつけるようなものや高いヒールの靴なども考えものです。
7)冷房、暖房
暑さや寒さ、お天気の変化に、ケイワンの患者さんは、少し敏感です。達者な人ではあまり考える必要もない、まわりの変化にもある程度の注意がいります。ことに夏の冷房(扇風機も含めて)で、ききすぎて体が冷えたり、片方だけ、あるいは一部分だけ冷えるのは、禁物、直接あたるのはさけた方がよいのです。暖房の場合、どうしても足元がひえて、上半身のみが暖かいことが多いのですが、これも工夫が必要です。

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一日も早い病気の回復を

ケイワンと診断されこれからケイワンと闘わなければならない方々のためにどうしても知ってほしい最低限のことを書いてみました。
しかしここで書いたのは、あくまで一般論であり、原則です。病気のあらわれ方は、一人一人の顔が違い、体つきが異なるように、少しずつ微妙に違っています。この原則を毎日の療養生活の中に応用していただき、少しでも病気の回復を早めるお手伝いになればうれしいことです。
このあとには、労災認定の問題、職場復帰の問題などどうしてもふれなければなりません。早急に追加し、皆さんのところへお届けしたいと思います。
最後にもう一度くりかえしますが、ケイワンと闘う主力は、患者さん自身です。医師やその他の医療担当者はその患者さんのたたかいが、よりうまく進むようにアドバイスしたり援助したりするにすぎません。
病気の正しい理解の上にたって、一日も早い回復ができますよう心から願っているものです。
このテキストについてはもちろんですが、病気のこと、治療のこと、その他何でもわからないことがあれば、相談員、医師、看護婦、検査技師、物療士、誰にでもえんりょなく聞いて下さい。

労災相談

病状がひどいため、仕事を休まなければならない場合もあります。治療に専念するために、労災申請を行うようなときは、産業医学科の受付で相談してください。


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